
フランスには、小さくても魅力的な街や村がたくさん存在します。絵本に出てくるような可愛らしい街並みや、どこか懐かしさが感じられる素朴な風景があります。そんなフランスの小さな街を散歩するこのシリーズ。今回はアルプ地方に位置するサン・タントワーヌ・ラベイにご案内いたします。
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アルプス山脈の麓に広がるこの地域には、果てしない緑地が広がっています。グルノーブルから車で向かう中、目に入ったのは、どこまでも続く胡桃農園。この地域は胡桃の名産地なのだとか。また、この地域は酪農や農業も盛んに行われています。そんな豊かな自然の真ん中にぽつんとある村がサン・タントワーヌ・ラベイ。この村は中世の街並みが今も残り、「フランスの美しい村」として認定も受けているほどです。
サン・タントワーヌ大修道院
サン・タントワーヌ・ラベイはその歴史の中で、「奇跡の村」と呼ばれていました。11世紀頃、ジェラン候が奇跡を起こすと言われていた聖大アントニオスの聖遺物を持ち帰ったのが始まり。当時猛威を奮った流行りの病を治すことができる奇跡の聖遺物と言われ、多くの巡礼者や病人が噂を聞きつけてやってきたのです。その為サン・タントワーヌ・ラベイは巡礼地として栄えました。

またこの村にはかつて病に苦しむ患者を受け入れる施療院がありました。しかし、幾たびの戦争によって施療院が破壊され、現在はモザイク模様の屋根が特徴的な門のみが残り、当時の面影を偲ばせています。

村の中心に位置するのが、サン・タントワーヌ大修道院付属教会です。この地域の美しいゴシック建築のひとつとして有名です。
中世の街並み

サン・タントワーヌ・ラベイには、美しい中世の街並みが広がります。もう何百年も変わらない温もりが感じられる石造りのある家が立ち並んでします。毎回フランスの中世の街並みが残る村に来るたびに思うのですが、丁寧に積まれた石造りの建築物を見るたびに、現代のような技術もない中でこのような建物を作った人々の凄まじい努力に感動を覚えます。

ところどころ村の建築物は風化されていますが、それもこの村の魅力のひとつ。中世はきっと建物そのものが完璧な美しさで保っていなかったでしょうから、このような景色を見るたびに、中世の面影が感じられます。「中世の街並みが残る村」と言われる所以です。

この村はちょっとした迷路のようになっていて、抜け道のように建物の下を潜れる小さな道があります。まるで抜け道のようで、思いのままに歩いて行くと、「あれ、ここはどこだっけ」と迷ってしまうのも、また面白いものでした。
サン・タントワーヌ・ラベイ博物館

この博物館では、修道院や治療用の香水についての展示がおこなわれていました。印象的だったのが、治療用の香水。中世では匂いの力によって自然治療がなされていたのだそうです。細かに当時の技術や香水の効能などが説明されています。治療の香水とはどんなものか。私たちが想像する香水の香りとは違う、より自然に近い香り。アロマが調合された香りに近いかもしれません。
この博物館の庭では、当時香水のために使われていた花の庭園がありました。私たちが訪れた夏には、庭いっぱいに美しい花が咲いていました。ちょうどこの季節に綺麗に咲くラベンダーの香りが漂い、ふと落ち着くような心持ちになったほどです。

奇跡を求めて多くの人が集まったこの村もその役割を終えて、現在は静寂な空気が漂っています。まるで中世から時が止まっているかのように。この村を訪れたときのことを思い出すたび、その静けさが心の中にふと蘇ってくるようです。