
フランスには、小さくても魅力的な街や村がたくさん存在します。絵本に出てくるような可愛らしい街並みや、どこか懐かしさが感じられる素朴な風景があります。そんなフランスの小さな街を散歩するこのシリーズ。今回は南仏に位置する小さな街、ユゼスにご案内いたします。
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ユゼスの街並み


季節がすっかり秋から冬に変わりつつある日、ユゼスの街を訪れました。南仏らしい青空が一面に広がっていたので、温暖な気温を想像していたのですが、車から降りると、予想外の風と寒さに、ちょっぴり驚いてしまったほどです。南仏は年中温暖な気候というイメージがありますが、このあたりは「ミストラル」と呼ばれる風が年中吹いているそうで、特に冬場は風による寒さが厳しく感じられるのだとか。
そんなこの地域特有の冷たい風に最初は「寒い!」と怯んでしまったものの、ユゼスの街に足を踏み入れると、すぐに心が浮き立ちました。ちょっぴり煤けたクリーム色の洗練された建築物が立ち並び、その美しさに思わず足を止めてしまったほど。同時に、スタイリッシュな街並みの中に、ほんの少し車を走らせれば大自然があるという環境のおかげでしょうか、どこか自然的な美しさも感じられます。ちなみにユゼスはガイドブックなんかでも「南仏の最も美しい街」と紹介されることもあるほどです。

またユゼスは路地裏が魅力的。街の中心部には車が入ることのできないほどの小さな道が入り組んでいます。ユゼスで滞在したアパートの大家の小さな娘さんから「あそこに秘密の路地があるから行ってみてね。」と教えてもらったほど。この街の子供たちは自分たちだけの路地裏を楽しんでいるようでした。静かな路地裏を歩くと、この街の住民の生活がぐんと短に感じられ、不思議とこの街に流れる特有の空気感を共有できたような気分になりました。
歴史的な街ユゼス

ユゼスは歴史遺産の街でもあります。ユゼスのすぐ近くには、ユネスコの世界遺産にも登録されたローマ時代の水道橋ポン・デュ・ガール(Pont du Gard)があります。ローマ時代は、ニームに送られる水の水源地がユゼスでした。その後、中世の時代もこの街は栄え、現在もその栄華が感じられるユゼス城や、12世紀に建てられたフネストレル塔などが残っています。歴史好きな人にも散策が楽しい街なのです。
有名な中世の庭


ユゼスの街で有名なのが中世の庭(Jardin médiéval)です。この庭には、中世の薬であった薬草が丁寧に植えられています。庭全体がまるで図鑑のようになっており、一つ一つ見ていくと、こんな植物がかつては薬として使用されていたことなど、意外な発見もありました。奥深い植物の世界を垣間見ることができて、植物が持つ自然の力にも触れたような気分になりました。

中世の庭には塔もあります。この塔は中を訪れることもできて、階段を一歩づつ登ると、屋上まで辿り着きます。ここはユゼスの街がパノラマで一望できる場所。目の前には、南仏特有のオレンジや茶色の瓦屋根が目の前に広がります。ランダムに並べられた瓦屋根がなんとも言えない味わい深い美しさを醸し出しています。そして、街の向こうには大自然が広がっています。紅葉された木々が、太陽の光に優しく包み込まれているようで、心に染みる美しさがありました。

中世の庭を一通り訪れると、最後は受付でハーブティーをいただくことができました。丁度夕暮れに差し掛かり、一段と冷え込む中、いただいたホットハーブティーに、ほっこり。なんだか温かい気持ちになり、中世の庭を後にしました。
オレンジの街灯が美しいの夜の街

秋から冬に変わるこの季節は、日が早く暮れ、あっという間に夜が訪れます。ユゼスの街にはオレンジ色の街灯が点灯します。オレンジの光がクリーム色の壁、そして石畳の道を美しく照らし出し、昼間に見た街の景色とは全然違う、幻想的な雰囲気を醸し出しています。そんな街中を歩いていると、幻想的な美しさに心吸い込まれるよう。夢心地に足を進めて行ったほどです。

そして、夜の街でも、カフェのテラス席は賑やかで、ワインを片手におしゃべりに花を咲かせる人たち。その人たちの楽しそうな様子も印象的でした。
魅力的なマルシェ


ユゼスの街には毎週水曜日と土曜日にマルシェが立ちます。ユゼスのマルシェは、この地域の中でも様々な種類のスタンドが立つということで有名なのだとか。土曜日に訪れた時は、多くの地元の人々で賑わいを見せており、なかなかの活気が感じられたほど。私も住民に混じってスタンドを見て回りましたが、野菜や肉、魚だけでなく、この地域の職人さんによる名産物を扱ったスタンドもあって、マルシェ散策がとにかく楽しかったです。勧められるままに食べた南仏の名物ヌガーというお菓子が今までに食べた中でも格段に美味しく、思わず購入してしまったほどでした。
ユゼスの街の思い出を振り返ってみても、今も美しい街の景色、その時に感じたことが蘇ってくるよう。ユゼスは、ただ単に美しい街だけではない何か不思議な魅力があるように感じられます。それが「南仏の最も美しい街」として言われる所以なのかもしれません。