
フランスには、小さくても魅力的な街や村がたくさん存在します。絵本に出てくるような可愛らしい街並みや、どこか懐かしさが感じられる素朴な風景があります。そんなフランスの小さな街を散歩するこのシリーズ。今回はノルマンディーに位置するレザンドリーにご案内いたします。
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ガイヤール城

小高い丘に車を止め、車を降りると目の前に広がっていたのは、廃墟のパノラマ。
秋の柔らかい光が降り注ぎ、自然の中にぽつりと残る廃城、その後ろを流れるセーヌ川の景色に、思わず「きれい」という言葉が出てしまったほど。
ここはノルマンディーのレザンドリーという小さな街に存在するガイヤール城。この城はイングランドの王リチャード1世の命によって、1196年から建造が開始され、2年という速さで完成します。1204年フランス軍によって陥落されますが、その後何百年という間、ガイヤール城では重要な歴史的事件が繰り広げられていきます。その後廃城となり、人々が撤退して、長い月日が経っています。

ガイヤール城は、90メートルの断崖に築かれた城。蛇行するセーヌ川、レザンドリーの美しい街を一望することができます。高台に位置するこの廃城には、心地よい風が吹いています。ここから眺める景色は瑞々しくて、ただただ美しい。

ガイヤール城の敷地内に立ってみると、ここは戦火の地だったとは想像できないほど、静寂さが感じられます。戦が何度も繰り広げられたかつての緊張した状態は、今や遠い昔の出来事。ガイヤール城は人の手から離れ、まるで自然と同化してしまったよう。かつての鉄壁の壁も今は自然に侵食されています。今は緊迫感なんて一ミリも感じられないほど、平和な場所になっています。
訪れた日は残念ながら、ガイヤール城の定休日。廃城にはなっていますが、ガイヤール城の中を訪れることができます。
セーヌ川沿い

ガイヤール城から車で降りていくと、すぐにレザンドリーの街に辿り着きます。
この街で印象的に残ったのは、セーヌ川の景色です。普段パリで見るセーヌ川とは全く様相が違っていて、凄く穏やか。川面に映るお日様の光が美しく、ゆらゆらと揺れる水の動きを、のんびり眺めているだけでも、心が静まっていくのが感じられるほどです。

モネを筆頭として、印象派の画家たちは、ノルマンディーの景色を多く描きました。時代は変わり、かつて存在した一部の自然は失われてはいますが、それでもこの地に立っていると、なぜ印象派の画家たちが、自然の変化の一瞬を捉え描いた理由がわかるような気がします。ノルマンディーの穏やかな自然は、一瞬一瞬でその表情を変え、どの瞬間も心の琴線に触れる美しさ。それを永遠のものとして描きたかったのではないかと感じたほど、ここには人の心に響くような美しい光、そして自然が存在します。
レザンドリーの街並み


レザンドリーは街というより、小さい街、むしろ村に近いかもしれません。街の中心部には教会、商店、レストランがぽつりぽつりとあるぐらいで、とりわけ何か特別な見どころがあるわけではありません。それでも、街を見て歩くだけでも楽しいものでした。
この街には、ノルマンディー特有の木組みの建築物が多く残っています。こじんまりとした家が多く、パリ近郊に住む私にとっては、メルヘンな世界観を感じたほど、可愛らしい景観がありました。特にセーヌ川沿いの家は、丹念に手入れされた家や庭が多く、ここに住む人々のゆったりとした暮らしが垣間見ることができるようでした。
廃城になったガイヤール城、その横を流れるセーヌ川、背後に広がる自然を眺めていると、不思議と心の奥が動くようなそんな感覚を覚えます。レザンドリーは、 流れゆく一瞬の美しさを感じることができる街です。